会社の経営権についても
話し合いをしなければ
なりません
夫婦で会社を経営している場合や、自分の経営する会社の株式を配偶者が保有したり、また、配偶者が会社の役員に就任している場合は、離婚に伴って、会社の経営権を今後どのようにするかについても話し合いをしなければなりません。
以下では、会社の経営形態ごとに、生じうる問題とその対応を紹介します。
CASE1 AB双方とも会社の株式・持ち分を保有し、AB双方ともに会社の役員である場合
- 1.ABどちらかが会社経営から離れる場合
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離婚に伴い、Bが会社から離脱し、Aが引き続き会社経営に携わるケースを考えてみましょう。
Bが会社から離脱する方法としては、例えば、Bの株式を会社が買い取り、Bが会社の役員を辞任することが考えられます。
もちろん、買取りは会社以外の者(Aや他の株主)であっても構いません(非公開会社の場合には、Bの株式譲渡について株主総会または取締役会で承認決議が必要となります)。株式の譲渡が完了したら、Bには会社を自ら辞任してもらいましょう。Bが自ら辞任するのではなく、会社がBを解任する場合には、解任に正当事由がないとして、後々、Bが会社に対して損害賠償請求を行う可能性があるため、望ましくありません。株式譲渡の際の、株式の価格の算定については、株式・持ち分の価格算定をご覧ください。
- 2.ABどちらも引き続き株式・持ち分を保有し、会社経営に携わる場合
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この場合、会社の株式・持ち分関係には変化がありません。そこで、離婚に伴う財産分与や慰謝料の算定においては、会社の株式・持ち分を算定対象から除外することが必要となります。
この点においては、後の紛争を防ぐため、会社の株式・持ち分を財産分与や慰謝料の算定対象から除外する旨を合意書の中で明記することになります。
CASE2 AB双方とも会社の株式・持ち分を保有しているが、Aのみが会社の役員である場合
今後、AがBの関与なく会社を運営したい場合には、Bから会社もしくはAに対して、株式・持ち分を譲渡してもらいましょう(非公開会社の場合には、Bの株式譲渡について株主総会または取締役会で承認決議が必要となります)。この株式・持ち分の譲渡は、財産分与や慰謝料の算定に関連してくるため、他の財産の移動と併せて十分に検討する必要があります。
株式譲渡の際の、株式の価格の算定については、株式・持ち分の価格算定をご覧ください。
CASE3 Aのみが会社の株式・持ち分を保有し、Aのみが会社の役員である場合
この場合、Aの保有する株式・持ち分は、Bに対する離婚に伴う財産分与や慰謝料の算定対象になります。
しかし今後も、AがBの関与なく会社を運営したい場合には、Aは会社の株式・持ち分に代わり、相当する金銭そのほかの財産の給付をBにすることになります。この点についても、後の混乱を防ぐため、合意書の中で明記することが大切になります。
株式の価格の算定については、株式・持ち分の価格算定をご覧ください。
CASE4 離婚に伴い、会社を清算する場合
この場合、会社の清算と離婚による財産分与や慰謝料請求は、別個に考える必要があります。ケースによりまずが、基本的には、会社の清算を先決して行い、清算に伴う会社の資産と負債の分配を算定した上で、離婚手続に入ることが合理的です。
当事務所は会社の清算手続にも精通しておりますので、一度ご相談ください。
CASE5 離婚に伴い、会社を分割・譲渡する場合
この場合も、会社の清算と同様、会社の分割・譲渡と離婚による財産分与や慰謝料請求は、別個に考える必要があります。また、基本的には、会社の分割・譲渡を離婚手続きよりも先決して行うことが望ましいです。会社の分割・譲渡は、手続や契約書の作成においても専門的知識を要します。当事務所は会社の分割・譲渡手続の経験も豊富ですので、一度ご相談ください。
いずれのパターンにせよ、経営権の合意は財産分与や慰謝料、子の親権等の他の離婚条件とも絡む場合があり、離婚条件全般について勘案することが必要となります。
さらに場合によっては、他の株主との関係にも配慮し、他の株主に対する手続が必要となることもあります。
また、株式・持ち分の譲渡や買取については、会社内部の承認手続を必要とする場合が多く、決議や議事録の作成といった作業も必要となります。
また、最終的に合意内容を文書に残す際にも、後の紛争を予防するために、法律の専門家による詳細なチェックが必要となります。
これらの一連の作業は専門的知識と労力、気力を多大に要するものですので、弁護士までご相談ください。